第1回 建設業における社会保険未加入対策について(前半)

こんにちは!
千葉建設業許可サポートの行政書士村上秀明です!
建設業許可コラムでは、建設業許可についてもう少し詳しく知りたいという方に向けて、毎回テーマを決めてお話させていただきます。
今回は、『建設業における社会保険未加入対策について』です。
建設業における社会保険未加入の問題というのは、平成24年11月から実務面でも大きな変更があったところで、これまで業界の特徴にもなっていた、社会保険加入率が低いという問題とその対策を指しています。

建設業の社会保険未加入の実態

国土交通省が公表しているデータによりますと、建設業全体における雇用保険と厚生年金保険への加入率は、それぞれ60%を少し超えたところとなっており、4割弱は未加入ということになっています。
(出典末尾参照)
※雇用保険
製造業 92.6% 建設業 61.0%
※厚生年金保険
製造業 87.1% 建設業 61.9%
また、たとえば土木工事について、元請・下請次数別にみますと、下請(孫請)に向かうほど、加入率が下がっているのが分かります。
※土木工事の労働者単位での加入状況
元請 87% 1次下請 72% 2次下請 53% 3次下請以下 49%

建設業の社会保険未加入問題の要因

建設業に限らず、法律上、会社は1人、個人事業主は5人以上の従業員が在籍する場合に社会保険への加入が義務付けられます。
ところが、以下のような要因(代表的なもの)で、社会保険未加入の現実があります。(出典末尾参照)
【元請業者の関与関係】
「社会保険は下請業者内の雇用主と従業員間の問題」との認識
【保険料負担関係】
受注競争が激化する中で工事利益を確保する必要性
保険料の事業主負担が重い
【職人等関係者の意識関係】
将来の保証よりも日々の手取り志向
保険加入が義務であることに対する不知
これらが複合的に関わり合って、建設業における社会保険未加入率が相対的に高い状態を生み出しているのですが、国もこの状態でよいと考えているわけではありません。
社会保険が未整備ということは労働条件が悪いということであって、建設業界全体の魅力を失わせることに繋がります。
結果として若者の入職者の減少を招きます。
建設技術者の高齢化を引き起こし、大切な技術が次世代に継承されることが困難となり、道路や公共建物といった社会資本の維持が困難となるからです。
また、適正に社会保険に加入し保険料を納付している建設業者よりも、社会保険に加入せず保険料も支払わない建設業者が強い価格競争力を有することになるというのも、おかしな話だからです。

建設業許可制度における対策の現れ

このような社会保険未加入の問題を是正するために、制度そのものの改革や、元請業者を通じた指導体制の構築、関係団体との取り組みなどを進めていますが、建設業者へ直接はたらきかける手法として、建設業許可申請時に加入状況の確認を行い、随時指導していく方法が平成24年11月よりスタートしています。
具体的には、以下のような流れとなっています。
建設業許可の新規許可申請と許可更新申請の際に、「健康保険等の加入状況(様式20号の3)」の提出をルール化しています。
確認資料として、雇用保険については労働保険概算・確定保険料申告書及び保険料領収済通知書を、健康保険・厚生年金保険については保険料領収証又は納入証明書を、それぞれ求めています。
現時点では、社会保険への加入が建設業許可の要件そのものではありませんので、「未加入=建設業許可申請の不許可又は取消し」とはなっていませんが、許可と同時に指導文書が送付されることになっています。
これには、後日、保険加入の報告が求められ、なお保険未加入の場合は、社会保険担当部局(雇用保険については地方労働局、健康保険・年金保険については日本年金機構。)に通報します。
この結果、社会保険担当部局から強制加入と保険料強制徴収の手続きへと進むことになります。

その他の社会保険未加入対策

上記の建設業許可申請時の対策に加え、以下のような対策がなされています。
・経営事項審査における減点幅の拡大
・元請業者を通じた下請業者への指導
・社会保険未加入に対する行政処分
これらについては、次回にお話しさせていただきたいと思います。
必要に応じて、社会保険労務士のご紹介もさせていただいております。

出典:国土交通省 土地・建設産業局建設市場整備課
『社会保険未加入対策について』平成24年1月18日

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