第3回 建設業における下請保護について(前篇)

こんにちは!
千葉建設業許可サポートの行政書士村上秀明です!

建設業許可コラムでは、建設業許可についてもう少し詳しく知りたいという方に向けて、毎回テーマを決めてお話させていただきます。
今回は、『建設業における下請保護について(前篇)』です。

建設業に限った話ではありませんが、一般消費者の手に商品や製品が渡るまでの間には、表面上の売主や請負人とは別に、部品メーカーや下請け業者の存在があります。

建設業においては、建築一式工事や土木一式工事というメネジメント業種を明確に規定し、少し大きな工事となると、この2業種の許可をもつ建設業者が元請業者として発注者(お客様)との間で契約をすることが通例です。

この構造の、発注者(お客様)と反対の側に、いわゆる下請業者が存在することになりますが、メリットもあればデメリットもあり、デメリットのひとつが元請業者による下請業者の支配関係が挙げられます。
この状態を解消するための方策が、下請保護と呼ばれるものです。

建設業界の重層構造のメリット

前述の通り、元請事業者が発注者(お客様)との窓口になりますが、その裏には土木工事・電気工事・内装仕上工事といった第一次下請業者が存在します。
そして、土木工事であればとび・土工工事や造園工事などが第二次下請業者として、電気工事であれば電気通信工事などが第二次下請業者として、内装仕上工事であれば、内装工事やガラス工事などが第二次下請業者として存在します。
さらに、とび・土工工事の下請業者としてブロック工事やほ装工事が、造園工事の下請業者として石工事などが、内装工事の下請業者として建具工事や大工工事が存在します。
これらは第三次下請業者となります。
大きなピラミッド構造が出来上がっているわけですが、各専門工事業者としては煩わしい官庁との手続や近隣対策に手間を取られることがなくなり現場作業に集中できるというメリットがあります。
工事全体として、効率的で適切な施工が期待でき、建設業界全体として望ましい姿である一方、発注者(お客様)も元請業者にのみ指示を出せばいいので、非常にメリットの多い体制と言えるでしょう。

建設業界の重層構造のデメリット

残念ながら、重層構造はメリットばかりではありません。
前述のような業界構造が固定化してくると、下請業者は元請業者から仕事を割り振ってもらえないと困る、という立場に追い込まれます。
もちろん、取引上弱い地位にある業者が強い立場にある業者の要求を受け入れていかないといけないのは市場原理そのものであり、これはこれで良い意味もあります。
一方で、この取引上の優な立場を利用して、元請業者が下請業者に不当な要求をすることがあります。
何らかの要因(経済環境・材料価格など)で建設業者側が負担を強いられるときに、下請業者にそのしわ寄せが回ってくるという構造です。
これが建設業界における重層構造のデメリットと言えるでしょう。

請負契約における下請業者保護ルール

建設業法では、前述のようなデメリットを回避するためにいくつかの施策を講じています。
ひとつが、請負契約における不誠実な行為を禁じることです。
建設業許可の要件の一つともなっていますので、請負契約の当事者は各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し信義に従って誠実にこれを履行しなければならないとするものです。
これ自体は素晴らしい考え方ではありますが、あまりに原則論の話に終始しており、具体性がありません。
そこで、以下のような具体的な義務を元請業者に課すことで、公正さを担保しています。
ア.見積条件の提示
イ.書面による契約の締結
ウ.不当に低い請負代金の禁止
エ.指値発注時の留意点
オ.不当な使用材料等の購入強制の禁止
カ.一方的なやり直し工事の禁止
キ.工期変更時の留意点
ク.赤伝処理の留意点
「見積条件の提示」により時間的猶予を確保し、
「書面による契約の締結」により証拠の保存を行い、
「不当に低い請負代金の禁止」により赤字強要を回避し、
「指値発注時の留意点」で適正な交渉を確保し、
「不当な使用材料等の購入強制の禁止」することで利益侵害を防止し、
「一方的なやり直し工事の禁止」により混乱や不経済を回避し、
「工期変更時の留意点」で不可抗力などを下請業者の責任から解放し、
「赤伝処理の留意点」により現実の支払いを確保するという流れです。

次回、それぞれの具体的な趣旨や内容を見ていきます。

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